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月曜日, 6月 15, 2026
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日本とアジアをつなぐ国際送電網実現できるか(三)国際送電に向けて日本は何をやるべきか

 これまでの記事の『国際送電網と北東アジア電力市場』『欧州国際送電網からアジア送電網への啓発』の中で、アジアにおける大規模な国際送電網の構想と試みや欧州の国際送電を紹介し、技術面でも制度面でも国際送電が実現できるという結論にも達した。したがって、欧州のように、アジア大陸から日本への送電も実現できると考えられる。現在のところ、中国-モンゴル、モンゴル-ロシア、ロシア-中国の間には、それぞれ国際連系線が設けられている。アジア国際送電規模の拡大に従い、日本まで国際送電網を広げるためには、制度面の改革が欠かせない。

 

01モンゴルの発電ポテンシャルは東アジア電力市場に供給できる

 

 現在のところモンゴルは電力の供給力が十分ではない。特に需要が増加する冬のピーク時に電力が不足する。さらに新しい鉱山の開発プロジェクトが大量の電力が必要になった。このため、隣接するロシアのシベリア地域と中国の内モンゴル自治区から電力を輸入して不足分を補っている。

 

 近年の経済成長が著しいモンゴルでは電力の需要が旺盛だ。国内の総発電電力量は年々拡大しているものの、それでも足りずに輸入量が急速に増えている。2015年にはモンゴルの総発電電力量の4分の1に相当する電力をロシアと中国から輸入した。電力の需要がピークになる冬の間も輸入量を増やすことで、国内の発電設備を増強せずに対応できている。

 

 モンゴルはロシアと中国から電力を積極的に輸入しているが、輸入電力の価格はモンゴル国内の電力よりも割高で、このまま増え続けると輸入によるコストが重くのしかかってくる。モンゴルでは南部のゴビ砂漠を中心に、風力発電と太陽光発電のポテンシャルの大きい地域が広がっていて、北東アジア諸国の中で開発する余地は十分にある。モンゴルは今後風力発電と太陽光発電に取り組み、近隣諸国に向けた電力の輸出を拡大する方向で検討を行っている。国際再生可能エネルギー機関の評価によると、モンゴル国内の風力発電と太陽光発電のポテンシャルを合計すると年間に15兆kWhを超える。これは中国と日本の電力需要を合わせる規模よりも大きい。

 

 日本を含めて北東アジアに国際送電網を整備した上で、モンゴルの自然エネルギー発電が規模になれば、モンゴルの自然エネルギーで作った電力を各国に供給できるようになる。

 

02 ロシアと中国の国際送電から電力制度改革を検討

 

 北東アジアで電力の輸出入が最も活発に行われているのは、ロシアと中国の2国間である。ロシアの極東地域にあるアムール州の水力発電所から、隣接する中国の黒竜江省へ大量の電力が送られている。

 

 黒竜江省では自動車産業をはじめ製造業が発展して、電力の需要が急速に増加した。ところが地域内の発電設備のうち76%を石炭火力が占めている。石炭火力発電所の排ガスによる大気汚染が深刻な状況で、二酸化炭素の排出量も大きな課題だ。

 

 一方ロシアのアムール州では、モンゴルの高原地帯からオホーツク海まで続くアムール川の流域に、大規模な水力発電所が2カ所ある。それに加えて新しい水力発電所の建設も進んでいる。ロシアのこちらの発電所は合計5本の国際連系線を使って年間に約30億kWhの電力が中国に送られてきた。中国側から見るとロシアの水力発電所の電力を輸入することによって、大気汚染やCO2排出量を抑制できるメリットがある。

 

 ただし、ロシアと中国の国際送電には、「電源の足りない国への一方通行の輸出」「二者間・二国間の長期相対取引」「火力発電を輸出に活用する計画」なども問題がある。こちらの問題を解決するには「需給パターンの違いに基づく相互融通」「複数の主体が参加したスポットを含む市場取引」「自然エネルギーを主力にした輸入」などの方向性が求められる。

 

 2016年にはロシアから中国へ輸出する電力の価格が引き下げられたため、ロシア側が輸出量を大幅に減らした。輸出価格は黒竜江省の公定卸売価格に合わせて年に1回見直す契約になっていて、市場を通じた価格設定はできない。

 

 このように2国間だけの取引では、コストや需給バランスに合わせた柔軟な相互融通ができず、国際送電網のメリットを十分に生かしきれない懸念がある。より多くの国を接続したうえで、広い地域を対象に取引できる制度やシステムの整備が北東アジアにも求められる。

 

03 東アジア国際送電網における日本

 

 前の記事『国際送電と北東アジア電力市場』の中で紹介した「アジア・スーパーグリッド」をはじめ、中国国家電網公司が提唱する「グローバル・エネルギー・インターコネクション」、韓国電力公社による「北東アジア電力連系線構想」が代表的な例である。

 

 国際送電網を日本まで展開するためには、解決すべき課題は少なくない。

 

 まず外交面で、電力取引に関する共通認識を関係各国の間で形成する必要がある。日本は国際電力取引に関連する国際的および地域的共通規則の策定、ならびに貿易紛争の解決に積極的に参加すべきである。東アジア諸国間で電力取引のコンセンサスを構築するために、国際的な電力取引を促進する環境を積極的に整う必要がある。

 

 さらに日本国内の電力市場を改革して、欧州の先進国のように需給バランスや価格変動に応じてダイナミックに電力を取引できるシステムの構築が欠かせない。

 

 現在、日本では各地域の電力会社ごとに送電網が分かれていて、地域間で電力を融通する際にも制約が生じるケースは少なくない。地域間の連系線の利用ルールが電力会社を優先する形になっていることが阻害要因になっている。新たに運転を開始する発電設備が増えて、北海道や東北地方で自然エネルギーの電力が大量に作られているにもかかわらず、需要の大きい首都圏まで届けられない事態が頻繁に発生する。

 

 したがって、日本が国際電力網に接続するために、国内電力網のルールを改善し、送電網の容量を増強し、電力市場の構造改革を迅速に実施する必要がある。

 

 こうした送電網の問題に加えて、電力を取引する卸市場の取引量が少ないという問題がある。自由化が進んだ現在でもなお、小売電気事業者が卸市場を通じて必要な電力を確保できる状況になっていない。2020年4月に実施する発送電分離までに、卸市場の取引量を増やすことが急務である。国際的に電力を融通し合うためにも、国内の卸市場の活性化が大前提になる。

 

 それに、国際的な取引を可能にする法制度の整備も必要になってくる。電気事業法など国内法の検討とともに、関係各国との間で国際連系に伴う合意を締結することが考えられる。

 

 2016年には、、中国国家電網公司、日本のソフトバンクグループ、韓国電力公社、ロシアの国営送電会社であるロスセチの4社が、国際送電網を推進するための調査・企画を実施することで覚書を締結した。各国で電力事業に取り組む有力企業が集結して国際送電網の構築へ動き出し、にわかに実現性が高まってきた。

 

結論

 

 このシリーズの記事は、国際送電網の概念の紹介から、アジア国際送電網の概念を提唱し、欧州国際送電網の観点から、アジア国際送電網にどのような経験を提供できるかを分析し、最後、アジアには豊富な電力製品を提供するポテンシャルがあること及び現在のアジア国際送電、国際電力市場に参入するための日本の改革など述べた。記事の最後の足がかりは日本にあるが、著者はこれらの経験が将来より大規模な国際協力を実行するアジア各国にも役立つと信じる。

 

(記者 鈴木 卓哉 編集 尾崎 和明 校閲 石井 美香)

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