Appleの電気自動車開発チームが解散された。10年にわたって100億ドルを投じた「Apple Car」開発プロジェクトが、結局は目標をできず、失敗に終わった。Bloombergのジャーナリストであるマーク・ガーマン(Mark Gurman)氏によると、Appleの電気自動車チームの中で、自動車用人工知能(AI)システムの開発を担当していたメンバーは、Appleの最も肝心なAI/MLチームに異動され、自動車用オペレーティングシステムを担当していたメンバーは他のソフトウェアチームに異動された。一方、ハードウェア担当チームのメンバーは解雇に直面している。
同報道が出ると、業界からの嘆きの声が上がり、自動車業界関係者は特に複雑な心境になっただろう。
ご存じのように、2024年1月末には、Appleが「Apple Car」に関する研究開発戦略と目標を調整したばかりだった。最初は完全自律型のL5レベルの自動運転車を開発する計画だったが、後にL4レベルに開発の目標を下げ、最近ではさらに2つレベル下げてL2+レベルの車種の開発に落ち着き、発売日も2028年に延期されることになった。最後の最後、Appleは自動運転車を開発する計画を完全にキャンセルすることにした。
(Apple Car自動運転車模型)
Appleが開発段階で目標のレベルを次々と下げきたことからも分かるように、現在の技術水準では、自動運転EVの開発は依然として極めて難しいことなのだ。では、Appleが最初になぜこの難関に挑もうとしたのだろうか?
「Apple Car」の夢が芽生えたのは
Appleがこの自動車開発計画を「タイタン・プロジェクト」と名付け、2024年までに「画期的なバッテリー技術」を備えた自動運転乗用車を開発すると宣言した。これは、かつてのiPhoneが携帯電話業界を変革したような神話を世界に再現しようというものである。確かに、Appleは常に革新的な技術と製品の先駆者であり、iPhoneからiPad、Apple Watchまで、電子製品の分野で大きな成功を収めてきた。自動車市場へ参入すれば、Appleはさらに事業の多角化をはかり、将来の技術開発でリーダーシップを維持するのにも役立つだろう。
それから、AppleはEV市場の大きなポテンシャルに引きつけられていたのだろう。過去数年間で急速に成長し、今後も成長が続くと予想されているEV市場。Appleはこの業界に進出し、莫大な利益を得たいと考えているのではないだろうか。
無論、Appleは人工知能、機械学習、チップ開発などの分野で強力な技術優位を持っている。これらの技術は電動自動車の開発に非常に重要である。例えば、AI技術は自動運転システムの作成に役立つ。また、チップ技術は電気自動車のより効率的な性能とより長い航続距離の達成に繋がる。
そのため、Appleの「タイタン・プロジェクト」の発表はEV業界をざわつかせ、Appleが本当に電動自転車業界で常識を覆すのではないかという心配が止まらなかった。NIOの副会長である李斌(リービン)氏は、Appleが長期的には強力な競合相手になる可能性があると述べた。李斌氏は当時、Appleが2024年に自社製品を発売するだろうと推測し、そしてそれは「究極のスマートカーになるだろう」と述べた。
しかし、このミッションは想像よりも難しかった。
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「Apple Car」の夢が覚めたのは
Appleは1620億ドルの資金を用意し、10年以上をかけて電気自動車の製造を試みたが、最終的に出した結論は、それを実現させるのが非常に難しいということであった。販売価格を10万ドルにしても利益は僅かである。
Appleの目標は何だったのろうか?かつてのiPhoneの「奇跡」を再現し、業界全体の80%の利益を手に入れようとしたのだろうか。しかし、今は以前とは異なり、TeslaやBYDなどの強力な競合他社、そして強力なバッテリーメーカーであるCATLを前に、Apple Carが自動車業界全体の80%の利益を獲得できるわけがないのだ。
スマートフォン時代には、Appleは簡単にサプライヤーたちを支配していたが、電動自動車時代にはバリューチェンの力の構図が既に変わった。
報道によると、CATLとBYDはAppleのタイタン・プロジェクトの電池サプライヤーの優先候補とされていた。そして、Appleは製造コストを低減させるため、リン酸鉄リチウム電池の採用を考えていた。2017年には、Appleが既にCATLと交渉をはじめ、Apple Car用のバッテリーの共同開発を計画していたという報道があった。その後、AppleがBYDともバッテリー供給に関する交渉を行っているという報道も見られていた。
「Apple Car」の夢が破れたのは
それにもかかわらず、2023年末に、CATLとBYDはAppleへのバッテリー供給を拒否したという。その理由は、Appleが両社に、Apple Carのための専門チームを米国で作り上げ、Appleだけのための電池工場を建設することを求めたが、それが実現できなかったからだという。CATLとBYD両社はこのことについてコメントしていなかった。
Appleは利益を得るため、常にサプライヤーに過大な要求を出している。スマートフォン時代において、Appleが高い利益を得ることができたのは、フォックスコンなどの受託生産工場に強い圧力をかけたからとも言われる。データによれば、AppleのiPhone 13の粗利率は48%に達しているが、これに対して、フォックスコンは2023年第3四半期の粗利率はわずか6.66%に過ぎなかった。
しかし、CATLとBYDは、世界のEVバッテリー市場のリーダーとして、両社の世界市場シェアは合計52.6%に達し、つまり世界市場シェアの半分以上を占めている。そのため、Appleをことわる自信は十分あるのだ。
世界のEVバッテリー市場シェア(出典@SNE Research)
SNE Researchのデータによると、2023年に世界でEVに搭載された駆動用バッテリーは、約705.5ギガワット時(GWh)だった。CATLは259.7GWhの搭載容量で世界市場の36.8%を占め、トップに位置している。BYDは111.4GWhの搭載容量で市場シェアの15.8%を占め、LGエナジーソリューションを抜いて世界第2位のメーカーとなった。
CATLやBYDといった強力な競合相手に対し、巨大な企業であるAppleでもお手上げだ。EVバッテリーは電気自動車のコストの40%を占めている。その高コストは、高利益率やサプライヤーを支配することに慣れたAppleにとっては受け入れがたいものだろう。
EV市場は確かに成長段階にあるが、現在は昔とは異なり、世界の電気自動車市場の競争環境はApple Carにとって非常に不利だと言える。現在の市場は、テスラやBYDがすでに巨大な存在となっている。テスラは2023年までに世界で累計181万台の電動車を納車し、前年比38%の成長を達成した。BYDは2023年までに世界で累計302.44万台を販売し、前年比で62%も成長した。その他、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMW、NIOなどの自動車メーカーも相当な存在感を持っている。
グーグル、メルセデス・ベンツ、テスラなどのトップ企業から人材を引き抜き、シリコンバレーのインターネットと自動車産業の「遺伝子」を組み合わせた「ハードコアチーム」を結成しても、Apple Carは今でも発売できていない。
10年にわたって、合計100億ドルを投じた「タイタン・プロジェクト」は、多くの戦略変更や発売遅延、経営変更を経て最終的に中止され、この「100億ドルの教訓」のコストが非常に高いと言わざるを得ないのではないか。
(文・編集 佐々木)



