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日曜日, 6月 14, 2026
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日本とアジアをつなぐ国際送電網は実現可能か(一)国際送電網と北東アジア電力市場

 

 いまや通信と同様に電力の領域でも多国間のネットワークが広がる。日本や中国を含む北東アジアに国際送電網を構築するプロジェクトが動き始めた。世界最大の電力市場に新たな競争がもたらされるのと同時に、各国をつないだ広域ネットワークで電力の安定供給を図りながら、自然エネルギーの電力を一気に拡大できる。 

 

 島の国の日本の送電網を他の国と接続することなど、想像できただろうか。電力市場を変革する国際送電網の構想が、いよいよ日本を巻き込む形で現実味を帯びてきた。中国や韓国、ロシアを加えた巨大な電力市場が国際送電網を通じて形成される日は遠くない。

 

 

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国際条約における国際送電網の考慮事項

 

 通信ネットワークと同様に国はケーブルを使用し近隣諸国との電力ネットワークを確立するには技術的および制度的な考慮が必要である。

 

 制度上、日本の周辺の海底には、数多くの通信ケーブルが張りめぐらされている実  績がある。各国の領海の外側でも、海底ケーブルを敷設する自由が国際条約で認められている。日本の周辺に海底ケーブルを敷設する場合には、韓国やロシアとの間に排他的経済水域が存在するが、二国間で合意を得ることができれば、その国際条約上の問題は生じない。だから、国際条約の制度からみると、国際送電は実行可能である。

 

02

 

アジアにおける国際送電網の構想

 

 アジアに国際送電網を展開する構想は21世紀に入って始まった(図2)。最も早く着手したのは、韓国とロシアの研究機関による「北東アジア電力システム統合プロジェクト」である。2002年に開始した共同プロジェクトの中で、ロシアの極東地域から北朝鮮を経由して韓国まで、国際送電網をつなぐ計画の実現性を検討した。

 

 さらに日本や中国を加えた国際送電網の構想として、自然エネルギー財団が「アジア・スーパーグリッド」を2011年に提唱した。風力発電と太陽光発電の導入ポテンシャルが大きいモンゴルを電力の供給源として、中国・韓国・ロシア・日本を国際送電網で結ぶ。

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03

 

国際送電網を繋ぐ構想--GEI構想

 

 2011年、「アジア・スーパーグリッド」が提唱されてからより規模の大きなプロジェクトもある。世界最大の送電事業者で知られる中国国家電網公司が「グローバル・エネルギー・インターコネクション(GEI)」を2015年に発表した。この構想に基づき、中・韓・ロ・日の4カ国の電気事業者が国際送電網の構築に向けて、2016年3月に合意文書を締結している。アジア・スーパーグリッドとGEIの構想は補完関係にあると言ってよい。

 

 

 

 GEIでは2050年までに世界全体を高圧の送電網でつなぐことを目指している。各大陸内の国際送電網を2030年までに、大陸間の送電網を2040年までに構築する計画である。アジアでは日本を含む北東アジアの他、中央アジア・東南アジア・南アジア・中東の5地域を対象に、水力・風力・太陽光といった自然エネルギーの電力を大量に供給できる国際送電網を想定している。

 

 こうした国際送電網への取り組みは、構想だけにとどまらない。2000年から2000年にかけて日本とロシアは「日露 Power Bridge Project」が展開されはじまった。実際にロシアのサハリンから日本まで、海底送電線を敷設する事業可能性の調査を実施したことがある。海底ケーブルの実績が豊富な住友電気工業の他、丸紅、ロシアの「統一電力システム」(当時)が調査に参画した。この計画で、サハリンの火力発電所から北海道の石狩を経由し新潟の柏崎までを海底ケーブルでつなぐ。

 

 現在のところ日露 Power Bridge Projectは事業化に着手する状況には至っていないものの、2016年にロシアのプーチン大統領が改めて極東地域から日本へ電力を供給するプロジェクトの再開に向けて日本側に提案を出した。2017年に入って両国の政府の間で広範囲に及ぶ経済協力の協議が進んでいるが、その柱の1つが電力を含むエネルギーの分野である。日本向けの輸出を拡大したいロシアにとっては、国際送電網を通じた電力の輸出は魅力的に映る。

 

04

 

北東アジアの電力市場を国際送電網で統合

 

 ロシアを加えた北東アジアに国際送電網を整備するインパクトは極めて大きい。それは各国の市場規模を見ればわかる。アジア・スーパーグリッドの対象に入る中国・日本・韓国・モンゴル・ロシアの5カ国を合わせると、GDP(国内総生産)と人口は全世界の20~25%を占め、発電電力量は30~35%にのぼる。CO2(二酸化炭素)の排出量は40%近い水準に達することから、CO2を排出しない自然エネルギーの拡大が重要な課題になっている。

 

 これだけ規模の大きい電力市場を国際送電網でつなぐためには、各国内で電力産業の自由化が進んでいることが条件になる。実際にはこちらの5カ国で発送電分離が完了し、国営の送電事業者が国全体をカバーする広域ネットワークを運用している。日本でも2020年4月までに発送電分離を実施する予定で、その後に各地域の送電事業を再編・統合する動きが東京電力グループを中心に進んでいく見通しだ。

 

 北東アジアに国際送電網を構築できると、電力の輸入と輸出が拡大していく。電力の安い国から高い国へ電力を売ることが可能になり、各国の小売価格の差が縮小する見込みだ。現在のところ日本の電力小売価格は他国と比べて圧倒的に高い。家庭向けでは韓国の約2倍、中国の約3倍、モンゴルやロシアの約4倍の水準にある。国際送電網が拡大することによって、日本の電気料金の低減が期待できる。

 

 電力の需給面でもメリットはある。5カ国の消費電力量を月別に見ると、日本・中国・韓国では夏と冬に電力需要のピークが訪れる。一方でモンゴルとロシアでは需要のピークは冬だけで、日・中・韓で需要が増大する夏に電力を供給できる十分な余力がある。

 

 加えて1日のうちで時間帯による差も見られる。電力需要が増大する冬の間、韓国では午前にピークが発生するのに対して、日本・モンゴル・ロシアでは夕方以降にピークを迎える。しかも時差があるため、都合よくピークの時間帯が重ならない。

 

結論

 

 本記事では、国際送電網の概況と国際規制におけるその可能性、東アジア諸国の国際送電網建設の計画と試み、北東アジアの国際電力市場の現状と開発の有利条件を紹介している。この点は先行する欧州で実証済みである。次篇では、ヨーロッパに目を向け、ヨーロッパの国際送電を紹介する。

 

(記者 山本 圭輔 編集 高橋 淳 校閲 石井 美香)

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